体温計

体温計


うたた寝特有の、夢と現が曖昧な心地良い感覚に包まれていた。

ふと意識が上昇する。

遠くの方で部活の掛け声が聞こえる。
頬には晩春の日の光の柔らかな暖かさを感じた。

安心するように再び意識が沈みかけた。


名を、呼ばれた気がした。


優しい、耳に心地よい声音に沈みかけた意識がまたふわりと舞い上がる。

無意識に次の呼び掛けを待ったが、何も起こらない。
再び眠りへと沈み始めた頃、優しく髪を梳かれる感触があった。
まどろみながらも、慈しむようなその仕種の心地良さにうっとりとなる。

今度は暖かく柔らかなものが、額にそっと落ちてくる。
瞼、こめかみ、頬へと順に降りて来た優しいそれは、何度か唇の上を彷徨った後、静かに離れていく。

追いかけるように目蓋が開いた。

目はどこかの天井を映しているが、意識がまだ伴わない。
覚醒のための無意識の行動で、深く息を吸って伸びをしようとするが、何かに腕を引っ張られた。
何気なく目をやり、動きが止まる。


縛られている−−−−−。


頭上で交差するように纏められた両手首は包帯で巻かれており、痛くはないがビクともしない。
30cmほど延ばされた包帯の先はベッドの柵にくくられていて、ずり上がらない限り顔まで手を下ろすこともできない。

「なに・・・」

事態がうまく飲み込めない。
これが女性ならば即座に身の危険に思考が及ぶのであろうが、男の場合、通常有り得ない事として無意識にその可能性を排除する。
のび太も例に漏れず、そんな事態は想定しない。

段々と覚醒していく。
見慣れた学校の保健室。
特に身体に痛みなどは感じない。

だが、何か奇妙な感覚がある。
なんだと思う前に、すぐ側に人がいるのに気付いた。

「出木杉」
「気分はどう?」

幼馴染で、高校生となった現在はクラスメイトでもある男は、その綺麗な顔に似合う優しい微笑を湛えながら訊ねてきた。
一気に目が覚める。


この男、出木杉英才は、悪魔だ。


スッと通った鼻梁は細く、高い。整えたように涼し気な眉毛の下にある黒目がちで切れ長の目は、寒々しい程理知的な光を放つ一方で退廃的な雰囲気をも合わせ持ち、独特の危うい色気が漂う。そこを縁取る睫毛は長く、陶磁器のような肌に微妙な影を落としている。細いが張りのある少し長めの艶やかな黒髪は自然に流されている。
整い過ぎて敬遠されそうな容貌だが、微かに笑みを浮かべたような口元が全体的に優しい雰囲気にしている。

のび太は実は出木杉の顔は結構好みだ。
男に好みも何も無いのだが、同性でも惹かれるというか、憧れに近いのだろう。
出木杉ほどまでいくと、観賞してるだけでも飽きない。

そう言うのび太自身も、何気に女の子が好みそうな整った顔をしている。
ミルクのような白い肌は滑らかな手触りで、顎は細い。少し色素が薄い髪は柔らかで、ところどころ跳ねているのが愛嬌だ。黙っていれば美少年のはずが、ほんの少し大きめの目に常にいたずら好きな光が浮かんでいて、その印象を与えない。
さらに身長は172cmと普通か少し高い方なので、決して女の子に見間違えられることは無い。

なのに、女の子からは悲しい程に警戒されず、「女友達みたい」と言われる始末。
そこへもって常に隣に出木杉がいるため、女の子達の視線は自然出木杉へと向いてしまうのだ。

容姿だけでも充分過ぎる程恵まれているのに、頭の方もすこぶる切れるときている。
学校の授業は真面目に受けているようだが、他のところで勉強している様子は無い。
なのに都内全ての高校で一斉に行うテストなどでは、上位3位内に必ずいる。
ならば性格は、となると、見た目を裏切らず、優しい。
ここまでくると、もはや馬鹿らしくて競争心も湧かない。

但し、出木杉が常に優しくするのは、のび太以外の人間に対してだ。

別に冷たいわけではない。
基本的には優しい。他の人に対してよりも数倍優しい。
かと思えば、突然態度が豹変するのだ。
しかも不機嫌になるだけならまだしも、奴の場合は意地悪をしてくる。
何かスイッチがあるらしいのだが、そのポイントが未だによく分からないのび太は、突然理不尽な怒りに遭ったとしか思えない。
何気に負けず嫌いなのび太は、それでよく喧嘩になる。

出木杉のノートは下手な先生の授業よりも分かりやすいと評判で、皆が参考書代わりに借りるため、順番待ちが出る。
のび太が何も言わないでも、出木杉はいつも優先して貸してくれる。
試験前のある日のこと、のび太はいつものようにノートを借りた。
そこへ、クラスは違うのだが、同じ授業を選択している娘が出木杉のノートを借りたいと言ってきた。
彼女は以前からのび太がちょっといいなと思っていた女の子で、のび太は先に借りていたノートを喜んでその女の子に貸してあげた。
ところがその娘が直接出木杉にノートを返しに来た事でそれを知った出木杉は、その女の子に対して、いつもの3割増サービス過剰笑顔で応対していた。 彼女の目がハートになっていたのは言わずもがな、である。

少しでも彼女と接点が欲しかったのび太は、彼女と話す貴重な機会を奪われたばかりか、その後の輝ける発展という夢も儚く散った。
無断で又貸ししたのは悪かったが、何もそういう方法で報復しないでも良いではないか。
第一、のび太がその女の子の事を好ましく思っていた事を、出木杉は知っていた筈なのだ。
好みのタイプを訊かれて、「あの娘みたいなカンジ」と答えた憶えが有る。
これと似たような事がその後も何度か有ったが、一度抗議をしたところ、「僕が何かしたかな」と軽くあしらわれた上、相当痛い皮肉も2、3個飛んで来てあえなく敗退、それから抗議の相手は専ら壁だ。
校舎の裏の壁に向かって悪態を吐く姿は我ながら情けないが、口で勝てるはずもない相手にわざわざ負けに行くのも悔しい。

それなのに、プライベートではのび太を誘って一緒に出掛けたりもする。
休日に一緒に出掛けたりするようになったのは、高校に入ってからだ。
中学の頃は帰宅部と運動部で大分生活サイクルが違ったし、他の幼馴染と遊ぶ方が断然多かった。

出木杉がのび太と同じ高校を受験すると知った時は心底驚いた。
のび太に留まらず、学校中が驚愕に包まれた。
勉強だけでなく、サッカーにおいてもその才能を発揮していた彼には、スポーツ特待生としての話もあったと噂に聞いていた。
奴ほど何でも出来る人間になると、最早凡人では計り知れない思考回路があるのだろうか。
家に一番近かったからという理由でも納得する。

受験シーズンになり、部活も引退した出木杉と、同じ高校を目指すという事もあり家に帰ってから一緒に勉強するようになった。 一緒にというより一方的にのび太が勉強を教わっていたというのが正解だ。
かなりスパルタに近かったが、随分と根気よくみてくれた甲斐あって、のび太は奇跡的に合格した。

一緒に合格発表を見に行った時には、出木杉は自分の番号より先にのび太の番号を探し、見つけると3度ほどのび太の持つ受験票と掲示板を目で往復した後、心底ほっとしたような様子だった。
例え哀しいくらいに勉強ができないのび太であっても、自分が付きっきりで教えた人間が落ちるのは出木杉にとって心外なのだろう。でも優しい男だから純粋に喜んでくれたのかもしれない。
自然、高校では一緒に行動するようになった。

学校では毎日顔を合わせるし、それこそ受験の時は家で膝を突き合わせていたのだが、それと外で会うのとはまたちょっと違う感じがする。

誘われて初めて一緒に出掛けた時、制服や部屋着以外の服装の出木杉が珍しく、見慣れているはずののび太ですら一瞬見蕩れてしまった。なんだかこそばゆくて、のび太の方は柄にもなく何を話そうなんて考えてちょっと落ち着かなかった。
普段から会話が弾む間柄というわけではないのだ。共通の趣味があるわけでも無いし、何するわけでもなくプライベートでまで自分と一緒にいて楽しいのだろうか。
でもそんなのび太をよそに、出木杉はいつも通りで、むしろひどく楽しそうだった。

常に微笑んでいるような優し気な顔をしているものの、全ての感情が素直に顔に出るのび太に比べれば、普段出木杉の見せる表情は少ない。
そんな出木杉に満面の笑みなんて見せられたら、のび太でなくともつられて微笑んでしまうというものだ。
始終機嫌の良い出木杉に自然のび太もいつもの調子が戻ってくる。
何かと小さな喧嘩の絶えない普段と全然違う、和やかな雰囲気が続いていた。

ところが、出木杉が他の幼馴染みとあまり交流がないようなので、高校は別々になってもそれなりに会っているのび太は彼等の近況報告でもと話をし始めたところ、だんだんと雲行きが怪しくなり、一緒に旅行に行く計画があるという段階に至ってはまぎれもない不機嫌オーラが出て、出木杉も行こうという誘い文句はそのまま口中に消えた。

まさか彼等の事が嫌いな筈は無い。
幼馴染みの中の1人のジャイアンに彼女が出来たらしいという話をした時には純粋に喜んであげていた。
むしろその祝福っぷりにのび太の方が胡散臭く思った程だ。

その日は最後の方で若干和んだものの、毎度の事ながらのび太も見当がつかない。
やはりこれと同じような事は何度かあり、一度は全然知らない街で置いていかれそうになったこともある。その時は親切そうな若い男の人が駅まで案内してくれようとした時に丁度戻って来たが、酷い事に変わりはない。

つい最近も、あった。しかも最大級の意地悪が。
なんと、初めてのび太に好意を寄せてくれる女の子が現れたのだ。
といっても、告白されたわけでは無いのではっきりとは言えないのだが、家で作ってきたという手作りのお菓子をくれた。
彼女は小悪魔のような大きな目が印象的で、胸まで伸ばした真っ直ぐで綺麗な髪は今時珍しく染めていない。
はっきり言って美人だ。
あまりの嬉しさにのび太は早速出木杉に自慢しに行った。
もて過ぎるほどもてる出木杉に自慢も何も無いのだが、意外にも特定の彼女はいない。
のび太の報告に、出木杉は片眉を少し上げて「ふうん」と言うだけの至極あっさりとした反応しか返さない。
ジャイアンの時に比べてその態度の違いはなんなんだと思いつつも、もしかして出木杉よりも早く彼女が出来るかもしれないという初めての優越感にあまり気にしなかった。
出木杉の「名前は?」「どんな娘?」という質問にも、浮かれっぱなしののび太は素直に答えていた。

昼休みの終わり頃、クラスが違う彼女は、のび太の教室まで「今日一緒に帰ろう」と誘いに来てくれた。
のび太がもちろん「うん」と言うつもりで口を開いた瞬間、横から聞き慣れた低音が発せられた。

「のび太、体調は良くなったのか」

は?と思わず声の主の出木杉を見ると、出木杉はさも心配そうにのび太の額に手を当てて、さらに「少し熱があるんじゃないのか」と言って来る。
それを聞いた彼女は、保健室まで付き合うと言ってくれたのだが、体調なんてすこぶる良いのび太は突然の茶番について行けない。

「僕が連れて行くから心配しないで」

ニッコリと優し気な笑みを浮かべながら言うと、出木杉がのび太と仲の良い友人だと知っている彼女はあっさりと頷いて、「放課後保健室に寄るね」と言って自分の教室へ帰って行った。

そしてのび太は本当に保健室へと連れて行かれたのだ。
スマートな優男に見えて、出木杉の腕力は相当ある。
のび太との身長差は10cmあるかないかだが、1回りは大きい体格に、運動で培われた確かな筋肉で引き締まっている。のび太の抵抗なんてものともしない。

保険医は不在で、というかしょっ中いないのだが、3つあるベッドのうち、一番奥のベッドに押し込まれた。
抗議しようとしたが、「これを飲んで」と何かの薬を渡されると、一瞬、直感的な危険信号に近い疑惑が浮かんだのだが、自分が分かっていないだけでもしかして本当に体調が悪いのかと、とりあえず素直に飲む。すぐに眠気がやって来て、逆らわずのび太は大好きな眠りの世界へと旅立った。


それがさっきまでの出来事だ。
そして、目覚めればこれだ。
ベッドサイドの椅子に座り、自分を覗き込んで来る綺麗な顔に一瞬でも見蕩れそうになった自分が腹立たしい。

きっとまた、出木杉の意地悪なのだ。
気分とかの前に、何か言うことがあるだろう。

「出木杉、なんだよコレ」

縛られた両手を主張するように、クイクイと軽く引っ張りながら問う。

「準備だよ」
「?準備?なんの」
「調教」
「ちょ・・・」

余りにも予想を大幅に越えた答えに、絶句する。

「あはは・・・チョウキョウって・・・ちょうきょうって・・・調教?ってまさか」

呟きながら、その言葉の属する世界と、この両手を縛られた状況から導き出される推測に笑いは乾き、頭の中では警鐘が高鳴る。
しかし御丁寧にも、

「その、まさか、だね」

覆して欲しかった事への決定打が返って来た。

(調教ってアレだろ・・・?ムチ打ったりローソク垂らしたり・・・!)

のび太の貧困な知識では、「調教=痛い事をする」という図式が成り立っている。
これ迄の経験から、SかMかで分けるとしたら、出木杉がSに属する人間であるということはかなり間違いない。
極Sと言っても過言ではないだろう。

「気分は?」
「きっ・・・気分はってお前、」

伸ばされて来た手に、思わずビクリと首を竦ませる。
既に出木杉は、のび太の中では無慈悲な女王様と化している。

「別に痛い事はしないよ」

のび太の考えを読んだような事を言いながら、大きくて指の長い、少し低い温度の手が、頸動脈の辺りに熱を計るように添えられる。
そんな事言われても、この状況で安心できない。
4本の指は首に添えたまま、親指の腹でのび太の頬を撫でるその優しい仕種も、恐怖を煽るだけだ。

「吐き気は無い?」
「別に無い・・・けど・・・」
(いやに気にするな・・・)

出木杉の言葉に受けていたショックの波が少し引くと、底辺にあった奇妙な感覚が、段々と意識に昇って来た。
なんだか、出木杉の触れるところがジンジンする。
悪寒に似た、鳥肌が立つような、でも決して不快では無い感覚。
身体の奥から、モゾモゾとした何かがせりあがってくる。
それに合わせて身体が熱く、動悸は激しくなって来た。

「で・・・出木杉・・・なんか変だ・・・」
「変?」

疑問系で聞いてくるものの、出木杉は分かっているような顔だ。

(まさか・・・)

「出木杉・・・さっきの薬・・・何?」
「ケミカルドラッグ」
「ド・・・ドラッグ?!」
「5meo-dipt・・・要するに媚薬」
「びっ・・・!!」
「弱く抑えてあるけどね」

そう言って、撫でるようにして驚愕に目を見開くのび太の首筋から手を引いた。

「っ・・・!」

たったそれだけで、背中をゾクリとした電気的な刺激が走り、腰に小さな火が灯る。

(マズイ・・・)

この感覚は、知っている。
恋愛事には奥手で彼女もまだいないのび太だが、健全な16歳、一人Hだって人並みにしている。
これは、解放するまで止まらない熾火のような熱だ。

気付いた途端、身体の熱はどんどん上がり、下半身には血が集まってくる。
のび太は思わず縋るように出木杉を見た。
出木杉はそんなのび太を只じっと見つめるだけだ。
だが、その目は決して冷たいものではなく、その瞳の奥には得体の知れない光がある。
出木杉の舐めるような視線に知らずモゾリと両足を擦り合わせ、その衣擦れにすら刺激を受けて、ますます焦りが強くなる。

「で・・・出木杉」
「何?」

呼ばれた出木杉がゆっくりと立ち上がり、のび太の顔の横に両手を付いて覆い被さるようにしてきた。

「解いてくれよコレ・・・」

肉食獣を思わせる動きに首が竦み、声は尻窄まりになる。
至近距離にある出木杉の息が顔に掛かり、慣れない距離感にたまらず目を伏せ、顔を背けた。
背けても分かる自分を見る視線の居た堪れなさに、顔が赤くなるのが分かる。
出木杉はのび太の顔を見たまま腕を伸ばし、縛られている両手首に片手を掛けた。
意外に素直に従ってくれるとほっとしたのび太は、出木杉が解いてくれるのを大人しく待った。

だが出木杉は、上を向いたのび太の手の平に手を滑らせ、緊張して握られていた指を伸ばすように指を絡めて手を握ってきた。
思わず視線を戻すと、そこにはかつてない程優し気で、でも意地悪な、魅入られそうな悪魔の微笑みを浮かべた男がいた。

「調教が済んだらね」


出木杉の両手指が、手の平、手首、腕、肘、二の腕、脇の下とゆっくりと滑ってゆく。
シャツ越しのそのもどかしい感触にすら、感じてしまう。これから何をされるのか分からないのがまた怖さを増して、目を閉じて思わず全身を固くした。

「目を開けて」
「うわっ」

そう囁くと、胸まで滑り降りた出木杉の指の腹がのび太の胸の飾りを探り当て、いたずらげにくるりと撫でる。
乳首が沈まない程度の軽いタッチだが、鋭く、しかも後を引く刺激に身体の奥の熾火が強くなる。
ズクリと、自身が反応した事をのび太は感じた。

(うそだろ・・・っ)

言われた通り目を開けたのび太は、目の前の出木杉がまだじっと自分を見つめている事に焦った。
感じてしまっている事を、気付かれたくない。
だが、頬が上気して赤くなっている事は自分でも分かる。
少し息が乱れてしまっている事も。
でも努めて平静を保とうと、顔はどうしようもないが、せめて呼吸は抑えようと腹に力を込める。
出木杉の指があっさりと胸から離れたのは、助かった。

だが、のび太の身体からは決して離れない。長く蠢く指はそのまま脇の下の方を辿って、脇腹を滑り降りる。
普段ならくすぐったくて身を捩ってしまうのに、撫でられて憶える感覚は、痺れるような気持ち良さだけだ。
脚の付け根まで降りた手は、折り返して、不穏な熱を抱えるのび太の横を通って、シャツの下へとゆっくり入り込んだ。

「ひゃっ・・・」

素肌に触れる出木杉の手は、先程と違ってひどく熱い。それとも熱いのは自分の方か。
腹から脇腹にかけて円を描くように撫でられると、込めていた力が抜けて熱い息が吐き出される。

「はぁ〜・・・」
「悪くないみたいだね」

微かに笑いを含んだ声に顔を上げると、唇が触れそうな距離にのび太の好みの顔がある。
乾いたのか、唇を赤い舌でちろりと舐める仕種がひどくセクシャルだ。
状況を忘れて思わず見蕩れるのび太を、ジーという音が現実に引き戻した。
見れば、いつのまにかベルトが外され、ファスナーを下ろされている。

「で・・・出木杉っ・・・」
「ん?」
「何して・・・よせよ!」

半勃ち状態がばれてしまうのに加え、出木杉の意図が分からず焦る。
どこまで何をやるつもりなのだろうか。
意地悪にしては、今までと質が違い過ぎる。

そんなのび太の焦りが分かっているだろうに、出木杉の手は止まらず、完全に前を寛げられる。
そして初めて出木杉はのび太から顔を離すと、のび太が隠したくてたまらない場所に視線を移動した。

「・・・感じているね」

そう言うと、下着をかすかに押し上げて主張を始めているのび太自身に何気なく触れてくる。

「あ・・・っ」

途端、ジン・・・と腰全体が重く痺れる。
そのまま包むようにやんわり握られて、のび太の大きさはぐんと増した。
下着の布越しに、体温が伝わってくる。
ゆっくりとリズミカルに、緩急付けて握りこまれて、思わず声が上がる。

「あっ・・・あっ・・・」

出木杉は股間を隠そうと脚を引き寄せて丸まったのび太の制服のズボンに手を掛けると、下着ごとずるりと膝まで引き降ろした。
早くも出ていた先走りがのび太の先端と下着の間に粘着質な糸を引き、たわんで腹から腿へと落ちる。
快感の証であるその冷たい感触に、恥ずかしさで全身の体温が一気に上がる。
だがそれ以上に、次々と考えもしない事をされて戸惑いが大きい。

「出木杉っシャレにならないよ・・・っ」
「シャレじゃないし」

そう答えると、脚から完全に抜き取ってしまう。
今やのび太は上半身はきちんとシャツを着たまま、下半身を覆う物は全て取り去られていた。
靴下だけが残されているのが、ひどく卑猥だ。
シャツの裾の合わせから覗くのび太自身は、萎えずに天を向いたままだ。

「何するんだよぅ・・・」

信じられない格好をさせられても、のび太はまだどこか安心していた。
出木杉が意地悪なのは身を以て知っているが、本当の本気で嫌がる事はしないということが分かっているからだ。

「のび太が良いコになるための、レッスンだよ」

剥き出しの脚を、ゆっくりと撫でながら出木杉が答える。
そんな事を言われても、わけが分からないのは変わらない。

だが、辿られたところから生まれるビリリとした刺激が、思考の邪魔をする。
そのまま脚の付け根に沿って指を這わされて、もどかしさに微かに腰がゆらめいた。

「んあっ・・・」

そんなのび太の様子に、クスリと笑みを零すと、出木杉はのび太の望む所へと指を伸ばす。

「ぁあっ!」

初めて触れる自分以外の他人の手。
衝撃がズウンと脳天から爪先まで一気に貫いて、のび太は身を捩った。

構わず出木杉は、今のび太自身がどうなっているのか、その形を教えるように人指し指でなぞる。
裏スジを辿って、括れの部分をくすぐるように遊ぶ。トクリと密を溢れさせるところまでくると、ぬめりを塗り広げるように円を描いた。

「あぁ〜」

そのまま絡み付いて来た長い指が、ばらばらな動きで握りこんでくる。
さらに軽く上下に動かされ、のび太の腰が跳ねた。
快感を散らすように踵を押し付けながら伸ばした両脚が、シーツに船が通った後のような皺を作る。

燃えるように身体が熱い。
耳のすぐ側で鳴っているかと思うくらい、鼓動が大きい。
甘えの滲んだような喘ぎ声が遠くに聞こえる。
自分の声なのか?考える側から快感の波に飲まれる。

気付けば、出木杉の手は止まって、その手筒に自ら腰を上下に動かして擦り付けていた。
その恥ずかし過ぎる痴態に、頭の片隅では信じられないと思いながらも、止められない。
目の裏で光がスパークしてきた。

(イク・・・)

だが、その瞬間強い力で握りこまれて、快感が散らされた。

「あっ・・・はっ、はっ、な・・・なんで・・・」

荒い息を吐きながら、不満気に出木杉を見る。
口元には変わらず笑みが浮かんでいるが、瞳の奥の不穏な光が強くなっている。
出木杉は腕を伸ばして、うっすらと汗ばむのび太の首筋に手を当てると、

「ひどく熱いね・・・熱を計ってみようか」

そう言って、予め用意してあったのか、すぐ側のサイドボードから体温計を取り出した。
今時珍しい、水銀計だ。

「ね・・・熱?」
「計り終えたら、ちゃんとイかせてあげるよ」

のび太にはもう何がなんだか分からない。
だがそれよりも、この身の内の熱を解放したい。
出木杉が計りたいというならば、いくらでも計らせてやるという心境だ。

だが、出木杉は取り出した体温計をすぐにのび太の口に入れようとせず、さらに小瓶を取り出すと、その中に体温計を入れた。
引き上げた体温計は、何かで濡れている。小瓶の中に滴り落ちるその様で、水ではなく油に近い何かだと分かる。

「それ何・・・」

そんなまた得体の知れない物を口にしたくはない。

「大丈夫、口に入れないから。入っても平気だけど」

では、脇の下か。それにしてもそれは何なのだろう。
じっと見つめる先にある出木杉の手元は、小瓶を傾けて解放を望むのび太自身に中味を垂らした。

「・・・っ」

茎を冷たい何かがゆっくりと落ちて行くのが分かる。
そのまま奥の方まで垂れて行き、蕾に辿り着いた感触に知らずヒクリとさせた。

「ん・・・」

出木杉は体温計で濡れそぼったのび太をなぞる。
敏感な先端を、体温を測る水銀の丸い部分で優しく刺激する。

「そ・・・そこで計るの?」
「ふふ、違うよ」

出木杉の行動は、またもやのび太の予想を覆した。
そのまま辿り降りた体温計は、さらに奥に進んで、あらぬところで止まった。

「で・・・出木杉っ?」
「計るのは、ここ」

そう言って、ためらわずのび太の蕾にツプリと体温計を突き入れた。
細い上に、潤滑油の滑りがあるせいで簡単に入る。

「やぁっ」
「直腸温は深部体温の一つでね」

暴れかけたのび太を、ベッドサイドから押さえ付けながら出木杉は説明を続ける。

「環境に左右されない、一定の温度が得られる場所なんだよ」

そんな親切な説明を受けたところで、嬉しくも何ともない。
だが、あまり暴れると危ないよ、という言葉に抵抗をやめる。
出木杉は大人しくなったのび太の蕾にさらにゆっくりと入れて、10cm程入ったところで止めた。

「ちゃんと計れてるよ、今36度2分を指してる」

わざわざ読み上げてくる。

「も・・・もういいだろ・・・」

自分の中にある異物を押し出そうと、中がひくついてしまうのが分かる。
あまりの恥ずかしさに、のび太は早く終わらせるよう頼んだ。
だが出木杉は、

「のび太のイく瞬間の体温を計ってあげる」
「あ・・・」

そう言って、体温計を挿したまま、萎えないままののび太に指を絡めて来た。

くちゅ・・・くちゅ・・・という卑猥な音が聞こえる。
裏側を押し上げるように擦られ、括れの部分を刺激されると、もうたまらず勝手に腰が揺れ始める。
しかも、跳ね上がった腰が降りる度、挿さったままの体温計がシーツに擦れて、のび太の中の思いもしない所を微かに突いてくる。

「おっと」
「あっぁあぁ〜」

のび太が激しく動いたせいで深く挿さりそうになった体温計を、危うく出木杉が引き出す。
その感触すら刺激になり、思わずのび太は濡れた声を上げた。

「のび太」

息を呑んだような気配があり、名を呼ばれて顔を上げると、ひどく熱っぽい目をした出木杉の顔が近付いてくる。
肩を抱くように手を回し、耳に口付けるほどに唇を寄せると、

「ここで」

のび太の蕾から出ている体温計を持って、中を軽くかき混ぜるように動かしつつ、

「イッてみる?」

腰が砕けそうなセクシーな低音で囁かれ、ついでというばかりに耳たぶを甘噛みされた。

「ぁあ〜」

奥から熱くなるような、じわりとした波がやってくる。

聞いておきながら、のび太の返事は待っていない。
出木杉の動かす体温計の丸い先が、何かを探るように動かされ、ある部分を掠めた。

「あっ!」

全身がビクリと跳ねる。
まるで神経を直に掴まれたような、強烈で鮮烈過ぎる快感。
反射的にずり上がって逃げようとするのび太を、肩に回された出木杉の腕が阻んだ。
そのまま確かめるように何度も突かれ、声も出ない程の波に襲われる。

出木杉は片手で器用に体温計を抜き差ししながらも、のび太自身を刺激し、肩に回した方の手はシャツを寄せ上げると、下から現れたのび太の赤い実をクニリと押しつぶした。
耳殻に沿って舌を這わせると、そのまま耳の穴に侵入する。
鼓膜を卑猥な濡れた音がダイレクトに襲う。
容赦ない四点責めに、のび太はまるで快楽の世界に放り出されたような錯覚を覚えた。

そのまま一気に昇り詰める。
生まれて初めてと言える程の強烈な射精感に、目の前が白くなった。

どの位経ったのか、気付いたら視界が段々と色を取り戻しているところだった。
まだ鼓動が激しい事から、あまり経っていないのかもしれない。
もしかして一瞬失神したのだろうか。

なかなか現実に戻れないのび太を覚醒させたのは、やはり出木杉だった。

「36度6分」

あまり動きたくない程だるいので、声のする方に視線だけを向けると、のび太の蕾から体温計を抜くところだった。
濡れてさしたる抵抗もなくちゅるりと抜かれた体温計を見て、出木杉がその温度を読んだのだ。

「少し、上がったかな」

そう言って微笑みながらのび太を見つめる。
出木杉が何を考えているのかさっぱり分からない。
ただでさえ思考が働かない今は、考える気力も無い。
そのまま出木杉の目を見返していたら、顔が近付いてくる。
思わず目を閉じると、頬に唇の感触を感じた。

(さっきと同じ感触だ・・・)

眠りから覚める前に感じた慈しむような感触を思い出し、のび太は突然に思い至った。
もしかして・・・出木杉は・・・

「好きなのか?」

唇を離した出木杉が至近距離で静かに見返してくる。

「僕のことが好きなのか?」

平静な時であれば決して聞けないような事だ。

「そうだと言ったら、どうするの?」

のび太の問いに、問いの形で返して来た。
どうする、そこまで考えていない。
只、嫌悪感などは全くないことに驚いた。こんな事までされて、怒りすら感じていない。

「分かんないけど・・・別に嫌じゃ無い、って言ったらどうする?」

またのび太が問いの形で返す。

「そうだね・・・まずはこの状態の君を」

そう言って、のび太の身体を見下ろす出木杉に釣られて、のび太も自分の身体を見下ろした。
シャツは上までたくし上げられ、さんざんいじられて赤くなった両方の乳首が覗いている。
白く滑らかな腹から胸に掛けてはのび太自身の放ったものが飛び散ったままだ。
下半身で唯一身に付けている靴下は半分脱げ掛かっている。
一度放って大人しくなっているのび太自身から蕾に掛けては、先走りと潤滑油で濡れて光っていた。

「食べてしまうかもしれない」

微笑みながら言うものの、目の奥は笑っていない。
出木杉はのび太の答えを待っている。

緊迫した静寂を、ノックの音が破った。
縛られたままののび太が、ビクリと身を竦ませる。

「鍵をかけたから、入っては来れないよ」

出木杉の言う通り、ドアを開けようとして、開かない音がする。

「のび太くん、いないの?」

のび太に好意を寄せている女の子の声がした。そう言えば、放課後に寄ると言っていた。
のび太が困惑していると、出木杉がひっそりと告げて来た。

「のび太、だめなら、彼女に返事を」

見上げると、そこにはのび太の好きな、自分だけを優しく見つめる瞳があった。

「そうしたら、ここは上手くごまかすよ。もう二度とこんな真似はしない。でももし彼女に返事をしないなら、」

のび太は続く言葉を待った。

「僕はこのまま君を、抱いてしまう」

告げられた選択肢の中には、のび太の最初の問いへの答えが含まれている。

なぜ、同じ男の出木杉の顔が好きなのか。
何よりもなぜ、今迄された事も含めて、自分は怒っていないのか。

教室に鞄が残っているせいだろう、彼女はまだ鍵のかかったドアの前にいる。
彼女は美人だ。
この先、もうこんなチャンスは無いかもしれない。



なのに、声は出なかった。
彼女の遠ざかる足音が聞こえる。

「のび太」

掠れたような声に視線を戻すと、そこには、のび太の知らない顔をした出木杉がいた。
その身を纏う王子様然とした雰囲気は鳴りを潜め、まぎれもない雄の匂いが立ち昇っている。

「のび太」

顔が近付いて、今度こそ、唇に降りてくる。
そっと押し付けられて、離れる。じっと見つめてくるその瞳には、声には出さない問いがあった。
答えるように瞼を伏せると、また角度を変えてそっと口付けて来る。

今度は離れない。
啄むようなキスを繰り返す。下唇を甘噛みされ、舐められた。
自然に開いたのび太の口の中に、そのまま舌が入り込んでくる。
熱い舌が、逃げるのび太の舌を追いかけ、搦め取り、強く吸い上げる。
思わず縋ろうとして腕を引っ張られ、まだ縛られたままなのに気付いた。

「で・・・んん・・・出木杉・・・」
「何・・・」

答えつつも、口付けを止める気配は無い。

「手・・・はっ・・・解いてよ・・・」

出木杉はのび太の甘い舌を味わったまま、視線だけ上げてのび太の縛られた両手首を見て、すぐに目の前ののび太に戻す。

「だめ」

短く答え、またキスに没頭しようとする。
まさか断られるとは思っていなかったのび太は、抗議の声を上げた。

「なんでっ」
「なんで?」

なぜ分からないのかという言い分を言外に滲ませ、でも律儀に答えてあげる。

「調教はまだ終わってないからね」
「ちょ・・・」

のび太は驚きで絶句した。

「・・・と待て!調教ってな・・・あっ・・・痛っ」

口付けをしたままのび太の身体をゆっくりと這い回っていた出木杉の手は、ぷくりと立ち上がった乳首を親指の腹で転がしていたが、のび太が再び抗議を始めると、おもむろに爪を立てた。
ジンとした痛みが、快感と表裏一体に苛む。

「あっあっ」
「君には必要な事だ」

長い口付けと、出木杉の愛撫に既に完全に勃ち上がっていたのび太の分身を、焦れったい程の動きで追い上げる。
イきそうになると阻まれ、また追い上げられる、永遠にも思えるその責めに抵抗する事も忘れて只ひたすら恩赦を待つ身となる。

冷たい感触に目を開けると、先程の小瓶を取り出して、中味をのび太自身に掛けていた。

「体温計入れるの?」
「体温計は入れないよ」

クスリと微笑ってのび太の分身を一撫ですると、そのままするりと奥へと指を伸ばす。
蕾の淵をなぞるように潤滑油を塗りこめると、中指をツプリと挿し入れた。
抵抗感はあるものの、先程体温計でさんざん掻き回したせいで、思ったよりは中が解れている。

「あっ・・・何・・・」
「指。十分解さないと、のび太が大変だからね」
「大変って・・・あっ!」

体温計で探り当てていた、のび太のポイントを出木杉の長い指が押した。
再びあの強烈な快感がやってくる。
指を2本、3本と増やされても、多少の圧迫感があるものの、のび太の中は柔軟に受け入れる。

「のび太の中、とろとろだ」
「あっ・・・はぁっ・・・」

出木杉のあの綺麗で長い指が、自分の中で蠢いている。
それだけでのび太の腰ははしたない程揺らめき、脚は開いてしまう。

(もうどうにかして欲しい・・・)

のび太が潤んだ瞳で見上げると、食い入るようにのび太を見つめていた出木杉は、抜き差しする指はそのまま、空いている方の手で自分の学ランの上着を脱いでシャツになった。
のび太の上に覆い被さってくると、風に乗って出木杉の香りが鼻を掠める。
さっきは気付かなかったが、何かコロンを付けているのか、良いにおいがする。
出木杉はのび太の唇を舐めて湿らせると、ちゅっと音をたててキスをした。
なんだか出木杉とのキスが癖になりそうだ、とぼんやりと思っていると、指が引き抜かれる。

「うんっ・・・」

中を埋めるものが無くなって入口が閉じきる前に、熱くて固いものが押し当てられた。
それが何であるかは分かったが、のび太は抵抗しなかった。

出木杉が、入って来る。
十分解されたとはいえ、指とは違い過ぎる圧倒的な質量に、一瞬恐怖を感じた。

「あぐっ・・・」
「のび太、息を吐いて・・・」

宥めてくる出木杉の声も、若干苦し気だ。
必死で力を抜いて息を吐くようにすると、出木杉がジワリと進める。
何度か繰り返し、雁首の部分を通り過ぎると、一気に奥まで突き入れて来る。

ようやく全てを納めた時には、出木杉の額にはうっすらと汗が浮かんでいた。

(ああ、コイツでも汗かくんだ・・・)

訳の分からない事を考えていたら、引き抜かれないまま緩く突き上げられる。

「あんっ」
「のび太・・・分かる?」
「あっぁあ〜」
「僕が入っているんだよ」

うっすらと目を開くと、目の前には快感をやり過ごすように耐える綺麗な顔があった。
視線で口付けを乞う。すぐに降りてくる優しい口付けを受けながら、出木杉に合わせて腰を動かす。
抜き差しのないままの腰だけを動かす突き上げは、のび太の中にじんわりとした熱を呼び起こした。

「出木杉・・・んっ」
「ん?」
「調教って・・・いつ終わるの・・・はぁ」
「のび太が反省したら」
「何を」
「何を?」

出木杉の動きがピタリと止まる。
不審に思ってのび太が見上げると、そこには口元は微笑みながらも、紛れもなく不機嫌なオーラを漂わせた出木杉がいた。
何よりも、意地悪そうに細められたその目が怖い。

なんかやばい・・・と思った時には遅く、容赦のない突き上げがのび太を襲った。

「例えばね」

ゆっくりと挿入し、身体が浮き上がるほど深く鋭く突き上げる動きを規則的に繰り返され、知らずそのリズムに合わせるように身体のそこかしこが動いている。

「誰のために必要も無いノート取りをしてるのか、そんな事も分からずに気に入りの女の子に貸したりとかね」
「あっ!」

入ってくる速度に合わせて深く息を吸い、犯される瞬間息を詰め、奥の奥でその存在を味わう。

「せっかくの初デートなのに他の人間の話ばかりするとかね」
「あぅ、デートだなんて・・・きゃぅ!」

突かれる度に溢れ出るのではないかと思う程蜜にまみれているそこは、出木杉を一分の隙もなく纏い込み、蠢いている。

「下心にも気付かず、ほいほい知らない男に付いて行こうとするとかね」
「お・・・お前が置いてったんだ・・・あぁ〜」

中を引きずり出すように出て行くのに合わせて浅く吐き出されるその吐息はひどく濡れて、紛れるように漏れる声は甘く艶めいている。

「好きでも無いのに、好意を示されただけで受け入れようとしたりね」
「そっそれは〜・・・ご・・・ごめ・・・んっ・・・」

何となく謝ってしまうが、一層激しくなってくる突き上げにもう思考が追い付かない。

「出木杉っ・・・出木杉・・・っ!」

目の前の、自分を翻弄する男の名を呼ぶことしかできない。
目の前にチカチカと光が飛び、のび太はそのまま信じられない程の快感の波に身を任せ、欲望を吐き出した。

「のび太・・・っ」

ほぼ同時に自分の中で弾ける感触があり、出木杉も果てた事が分かる。
のび太は薄れて行く意識の中、「これでもう、僕のものだ・・・」という出木杉の囁きを聞いた気がした。



後日。

「ああ〜やっぱり惜しい事したかな・・・」
「何が」

教室でいつものように、出木杉と他愛も無い話をする。
窓の下には、かつてのび太に好意を寄せていた女の子が、彼氏と歩いているのが見える。

「可愛いんだよね〜彼女・・・」
「確かにね」

まさか同意されると思わなかったのび太は、思わず出木杉を見る。

「お前でも可愛いとか思うわけ」
「そりゃね」
「へぇ〜・・・」
「そうやって嫉妬心を試そうとしてくれるところとか」
「ぶっ・・・それって僕の事か?」
「そうだよ、可愛いベイビーちゃん」
「っ〜〜〜」
「おや、顔が赤いね。熱でも計ってあげようか?」
「なっ・・・」

のび太は、クラスメートから恋人へと変わった幼馴染みを悔し気に睨む。
なんだか最近、今までのお返しとばかりに翻弄されっぱなしなような気がする。
でも、こんな意地悪な出木杉は自分しか知らないのかと思うと、のび太はちょっと嬉しいと思ってしまう。

この自分の感覚はちょっと危ないかも・・・と思うが、幸せならばなんでも良いのだと開き直った。


END



腐女子の皆様、大変お待たせ致しました♥
そして最後まで読んでくださった方、大変お疲れ様でした。
話長っ!ってかエロが長いのか。ええもうホントに。

変態万歳。な絵には、変態プレイなお話。
でもやっぱりラヴが入っちゃうところが、私の好みであり、限界か(笑)。
最後の方は、口からエクトプラズム出てたので、読みにくいところなどあったかと思いますが、ご容赦下さい。
もうね〜、ほんとに小説ってハードル高いのよ〜。
どんどん小さくなる縦スクロールバーに恐怖を覚えながらも、ファイルを分けないズボラな私☆


もう1回絵を見ちゃう

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