IN WONDERLAND
それは、とある夏の休日の日の午後のこと―――――――――――――。
「……いへんだっ大変だっ大変だ〜〜〜〜〜〜〜っっっ!!!」
「……ドラえもん……?」
高校2年になっても休みの日ののび太の過ごし方は相変わらず。漫画本を片手に自室でゴロゴロ。そして、それも読み終わってうとうと昼寝をしかけていたところで聞こえてきたのは、何時に無く慌てた様子のドラえもんの声。
それに一体何事かと身を起こすと。
「大変だ大変だ大変だッッ」
「げっ…!?何それっ?!一体どうしたのっ?!ドラえもんッッ!!??」
部屋に飛び込んで来たドラえもんの頭には、猫耳ではなくウサギの耳が付いていて、首の鈴は同じ大きさの時計になっている。そして、驚いて問い掛けるのび太も目に入らぬ様子で机の引き出しに、ぴょん、と飛び付くと、其の侭、中へと消えて行き。
「ちょっ・ちょっと待ってよ!ドラえもんっ!!」
迷わず――と云うか、思わずのび太はその後を追ったのだが、
「ちょっ…嘘だろっ!?何でー―――――――っっっ!!!???」
引き出しを開けて入った先には、常なら有る筈のタイムマシンもドラえもんの姿も無くて。
「助けてー―!ドラえもー――――んッッ;;;」
と、定番の科白を叫びながら、のび太は何時とも何処とも知れぬ、只々真っ暗な空間の中を落ちて行ったのだった。
―――――――――そして、気が付いてみれば。
「何処だよっ此処っ!? 何だよっこの恰好っ!?///////」
のび太が目を覚ましたのは、低く細長い天井にランプが一列に並んだ大広間。同様にその壁には沢山のドアが並んでいて、最奥に大きな鏡が一つ。其処に映ったのび太の姿はと云えば、
目に鮮やかなスカイブルーのワンピースに、ふんだんにレースの使われた真っ白なエプロン。
胸元には黒いリボンが結ばれていて、同じ材質の細めのリボンが髪にも結ばれている。
そして、そのエプロンドレスの下、フリル使いの白のペチコートの裾から覗く両下肢は、同じ白のストッキングに黒いエナメルのストラップシューズ。
その上、妙な違和感に恐る恐るペチコートの裾を捲って見たところ、ストッキングを留めていたのは現物を見るのは此れが初めてのガーターベルト。
余りなその装いに、のび太は羞恥を通り越し怒りさえ覚えて、髪に結ばれたリボンを毟り取り床に叩き付けると、その衣装を解こうと、先ずは手始めにガーターベルトに手を掛ける。
だが、
「何で下っ!?」
レッグハンガーは下着の‘下’に着けられており、それでも何とか脱ごうと下着の中に手を入れ腰周りを探ったのだが、中々ホックが見付けられず、漸く見つけたそれも後ろ留めの所為で結局外す迄には至らなくて。
「くそうっ!!////」
のび太はぶり返した羞恥に顔を赤くし、居た堪れなさを感じながら、取り敢えず、この場所から移動する事へと思考を切り替える。
そうして一番手前に有ったドアノブに手を伸ばしたのだが、
「あれ?鍵が掛かってんのかな?」
ノブはガチャガチャと音を立てるだけで回ることなく、次いで隣のドア、更にその隣のドアと移動して確かめるも、どれも同じで。
「と…閉じ込められた?」
そんな不安にじわりと額にイヤな汗が浮かぶ。
何と云っても、こんな一般家庭には有り得ない造りと雰囲気の部屋に・纏わされた倒錯的衣装。一体誰の仕業かは分からないけれど、とても正気(まとも)な趣味・思考の者だとは思えなくて。
「ド…ドラえもん〜〜〜〜〜〜っ;;;」
情けなくもそう呟いたところで、ハタ、と思い当たる。
「そもそもの始まりってドラえもんじゃないか……?」
あの総てに於いて何時もとは全く違った様子。それを追い掛けて、こんな場所(ところ)でこんな恰好をしている自分。
だったら、やっぱりドラえもんが何とかしてくれる筈!――――そう考えて、
「助けてー―――!! ドラえもー―――んっ!!」
一際大きな声を上げて何処へともなく呼び掛けると。
「…は?あ・あれっ?」
のび太の声に応じる様にして現れたのは、ドラえもん……ではなく、ガラス製の3本脚のテーブルと矢張りガラス製の洒落たカッティングが施された小瓶が一つ。そして、その小瓶に貼付されたラベルの、
「『私をお飲み。』って…って―――――うわ!? どこでもドア?!」
文字を読み上げたところ、大きさこそ異なるが色や形は間違いなく馴染みのドラえもんの秘密道具の『どこでもドア』が現れて。
恐らく、瓶の中身の液体を飲めば高さ30cm程のそれは通れる、との事なのだろうと察しは付いたのだけれど。
「や…やっぱりドラえもん……?でも、だったらガリバートンネルとかスモールライトとかでも良い筈なのに、何でこんな…」
怪しげな物を飲まなければならないんだろう……;;;?とのび太は当惑する。
出現の仕方もそうだけれど液体自体も充分怪しい。
薄いピンク色をしたそれは、蓋を開けてみればお菓子のような・花のような甘い香りが漂うけれども、瓶を持ち上げて軽く振ってみるとトロリ…とした粘性が有って、どうにも口にするのを躊躇われる。
だが、念の為…と開いてみたドアの向こうには確かに先刻迄(と云ってもどれ位時間が経っているかは分からないが)自分が居た自室の光景が覗き見え、更には、もしかしたらドラえもんが迎えに来てくれるかも、と暫く待ってみたものの一向に現れず、それどころか、もしかしたら突然現れたそれらの脱出アイテムは、また突然に消えてしまうのではないかと云う不安にも襲われて。
「…大、丈夫、かも……」
恐る恐る小瓶の中身に小指を浸して舐めてみたが僅かな量では特別な変化は何も現れず、それに、その味はその性状とは正反対のふんわりと軽い・上品な味わいで。
どうやら思ったよりも悪いものでは――最悪、毒ではないみたいだ――と判断して、のび太は一気にそれを飲み干す。
―――が。
「あ…れ?小さくならない?」
どころか。
「――――――漸く飲んでくれたね。どう?美味しかった……?」
「へっ…?! ひァッ」
突然にするりと絡み付いてきた腕。そして、耳許に・耳朶を掠めるようにしてクスクスと云う笑いと共に落とされた声。
聞き覚えのあるそれに驚いて振り向くと、
「でっ…!? ででででで出木杉ー―――――――――――――――――っっっ!!!!!?????」
背後からのび太を抱きしめて笑みを浮かべて立っていたのは、出木杉英才、その人。
漆黒のサラサラの髪に切れ長の涼しげな瞳、すっと伸びた鼻梁に形の良い唇は、何時もと同じ、その名の通り過ぎると思える程整った美貌(それ)。
だが、今は、そのサラサラの髪の間にはピン、と立ち上がった同じ漆黒の艶の有る毛の猫耳が有り、そして、目を落とすと、腰の辺りにも同色の同じ毛並みの長い尻尾の先端(さき)が見て取れて。酷くバランスの良い
・しなやかな体躯を包んでいる黒いスーツと相俟って、
「く…黒猫…?」
のび太は自分のしている(させられている)恰好の事は忘れて、そう口にしたのだけれども、
「そう…黒猫…、のチェシャ猫らしいね」
笑みを深くして返した出木杉の眸の色や引き上げた口の端が、猫なんて可愛い生き物の範疇には到底入れられないもので有ることに気付いて、
(ね…猫って云うより豹っυ黒‘豹’って云う方が絶対合ってる〜〜〜〜〜〜〜〜っ;;;てか、何で出木杉がこんな所にこんな恰好で〜〜〜っ!?;;;)
と思い直し、知らず、コクリ。と生唾を飲み込む。
そして、自然、身体を後方へと退きながら、あ、あのさ…、とその疑問に口を開き掛けたところ、
「なっ…に?」
不意に足元がふわっと浮いたと思った瞬間、目の前の出木杉を残して、その他の光景が変化して。
ドアが並ぶ壁だったところがランプが並ぶ天井へ。
それを認めて、のび太は、自分の背中や腰に当たる固い感触が床のそれであることに気付く。
その上、出木杉は倒れた際に僅かに捲れ上がったワンピースの裾から覗くストッキングに包まれていない素肢の部分に手を這わせて撫で上げてきて。
ぞくり、と悪寒のような感覚が背を走る。次いで、触られた部分の肌が粟立つような感じを認識(みと)め、それが次第にじんわりと広がって行くのも覚えて。
「ちょっ…何っこんな時に変な悪戯っ……!!」
のび太は慌てて出木杉の手を払い除けて身を起こそうとするも、もう片方の手で軽く肩を押さえているだけの筈の出木杉の身体はビクともしなくて。
「あ、あれっ?何で?」
その奇妙さに思わず呟く。すると、
「知りたい…?」
間の距離を保ったまま、真上から出木杉がニッコリと微笑み掛けてきて。だが、先程と同様に――否、先程以上に、その目の端や口の端が示しているのは‘ニッコリ’とも‘微笑み’とも縁遠い種類のもので。
ど…どうしよう、とのび太は返事に窮する。
だが、そんなのび太に頓着することなく出木杉は、
「此処はね、どうやら『不思議の国のアリス』を模した世界らしいんだ。僕も何時の間にかこの世界に迷い込んでいて、最初は何が何だかさっぱり分からなかったのだけど気が付いた時、側にドラえもんの『通り抜けフープ』が落ちていて。で、取り敢えず、状況を探ってみようと行ける場所行ける場所に空間を繋いで巡ってみたら、アリスの世界だと云うことが判って、そのキャスティングに感心したり首を捻ったりしていたんだけど、でも、ふと肝心のアリスが何処にも居ないことに気付いて………」
そう。出木杉が見たのは、帽子屋のスネ夫に公爵夫人のジャイアンに女王様の静香、それに王様のドラミにトランプのミニドラ、その他はクラスメイトが為っていて。
メインキャストが親しい人間、そして、それ以外のキャストがある程度付き合いの上で距離の有る人物となれば、自ずとアリス役の察しも付く。
そうして通り抜けフープを使って現実世界へ戻る試みなんてすることも無く、その登場を待っていたところ――――――――――――――、
「案の定、魅力的な装いののび太が現れた」
「みっ…魅力的っ?!;;;」
「だってそうだろう?こんなの、現実の世界じゃ中々御目に掛かれない」
白い肌に映える青いドレスに、絶妙なその丈から覗き見える素肌と其処から伸びた細い脚。
胸元の黒いリボンは紅い唇とコントラストを為し、もう解かれてしまったけれども髪に結ばれていたそれは薄茶色の柔らかな毛髪を印象付けて。
「だから、酷く愛らしくて、且つ、煽情的な姿に、少し、この後の展開を変更させて貰ったんだ」
「変更…っ?!」
何だか途轍も無い嫌な予感にのび太の声が上擦る。思わず訊き返すような音で声を発してしまったことにも深い後悔を感じながら、それでも何とか出木杉から離れようと必死で身を捩る。
「この先のアリスの話をのび太は知ってる?」
出木杉の問いに、のび太は知ってる訳無いだろうっ!?と心内で怒鳴り返す。
知っていたら、先ずこんな、出木杉が現れるような場所に何時までも留まっていなかった。多少の無茶はしてでも何とか違う場所へと脱出を図っていた。
この先、一体、どんな展開が待っていると云うのか。
「本来はね、アリスはガラス瓶の薬を飲んで小さくなるんだ。そして、ドアを潜って様々な人物・動物・昆虫等に出会いながらお城へ行く。そして最終的には元の世界に戻るんだけどね」
(って、だったらその通りにしとけよっ!!…って、あ…あれっ?!)
出木杉の説明の中に、聞き捨てならない科白が有った。
『本来はアリスはガラス瓶の薬を飲んで小さくなる』
「ぼっ…僕は小さくならなかったぞっ!?」
思わず身体の動きを止めて噛み付く様に出木杉に云い募る。すると、
「だから、それが最初の変更。そして、大本、かな。瓶の中身を摩り替えさせて貰ったんだ。でないと、」
「でないと……?」
アリス―――否、のび太は、この後、涙の池に落ちるのだが、その時の様子はと云えば想像に容易い。
この現在の只でさえ周囲の人間の目を惹く・気を惹く様な恰好をしているのに、それが水に濡れてピッタリと身体に張り付いて。ほっそりと嫋やかな肩や腰、肢などのラインが露になって。そして雫を落とす髪とそれが伝う肌の白さが鮮明になって。そんなのを大勢のクラスの男の目に晒すなんてとんでもない。
それにスネ夫の帽子屋だって勧めるお茶に何を入れるか分からないし、ジャイアンの公爵夫人だって本来物語に有る動作と云えども、腕を組んで寄り添い歩いたり、肩に顎を埋めたり、腰に手を回し掛ける等、極めて密着度が高く、危険度も高くて。
安心なのは、それらの登場人物を片っ端から怒鳴り散らし、「Be head
!!(首を切れ!!)」と命ずる女王様の静香くらいだ、と云う考えに出木杉は到って。
「そんなとんでも無い馬鹿なコト誰が考えるんだよっ!!////出木杉くらいだよっ!!ホント馬鹿じゃないっっ?!//////」
その余りにも恥ずかしい思考に、のび太は顔だけで無く全身を真っ赤に染めて、今度こそ心内では無く、声に出して出木杉を一喝する。――――が。
「あ、あれ……?ちょっと、何か、」
身体が可変しい。
出木杉の身体を押し退けられないなど普段より力が入らないと感じていたのは先(さっき)からだったけれども。
上った頬の熱さが取れない。頬だけでなく全身の熱さが取れない。それどころか、次から次へと身の内から熱が湧き上がり、火照りが強くなって行くのを感じる。そして、体温だけでは無い。呼吸も。ヤケに息が上がって、身体の熱さに比例して熱を帯びた吐息が漏れ始めて。
「出木杉っ…一体、僕に何飲ませてっ」
焦るのび太の問いに、出木杉がしれっと答える。
「ん?媚薬」
「はァッ?!」
「この広間の上はね、四方一面が戸棚や本棚になった縦穴の部屋なんだ。其処にフープを繋いで失敬してきた物だから、今一、効果の程が分からなかったんだけど……」
「って、そんな…っ良く分かんな、い…怪しげなモン、飲ま…せんなよっ!!」
「でも、ちゃんと効いているだろう?」
「…っ!」
一度払われた出木杉の手が再び元の位置に戻って、その手が更にのび太の腿の奥の内側へと這わされて行く。
その感覚は先刻のそれよりも強く・深く感じられ、のび太の身体がビクリッと大きく顫える。
「ちょっ…やだっ…触んな、よっ…!!」
「何で?」
「何、で…って…そんな、のっ、」
「当たり前…って?でも、薬の使用法から云えば、触る方が当たり前じゃない…?ホラ、」
「あ…ッ」
頬を紅潮させて慌て身を揺るがすのび太に、出木杉の手は更にその触れる範囲を広げて行って、肩を押さえていた手もゆっくりと首筋を・そして耳の裏を辿り、上下し始めて。
ビクビクと、のび太の躰が顫える。
通常なら擽ったいと思う程度のそれが、一気に快感として齎される。
熱が強まり、身体の数箇所が硬く形を変えて行く。
「ワンピースって着崩させるのにはちょっと不向きな服だよね。可愛いけど」
「やっ…!」
首筋から胸の上へと出木杉の手が移動する。だが、それは素肌の上では無く、エプロンとワンピースの間。
けれども、布越しにも二つの突起の在り処は明瞭で、その上を出木杉は円を描く様に指先でくるくると触れ、また抓み上げ、布ごと擦り上げる様にして。
硬さと大きさが一段と増す。目には見えないけれど、その二つの飾りはきっと濃紅色に色付いている。
「ああ、ほら、此方も」
「アアッ…!!」
不意に大腿を撫で上げていた出木杉の手が、のび太の中心へと伸ばされる。
その瞬間、そこはグンと更に大きく成長し、既に先走りで濡れていた下着の先端の当たる部分をより濡らして、その上、知らず其処を強調するように透けるその部分にピッタリと張り付き、押し上げて。
出木杉は胸と同じくのび太のその部分も指先でくるくると触れ刺激する。すると零れる蜜はその量を増しクチクチッ…といやらしい水音が聴こえ始め、布越しにも拘らず、指を離せば細い粘性の糸を引いて。
出木杉はクスリ、と微笑って徐に其処に顔を近付ける。
そうして、其れ迄のび太を弄っていた手は、たくし上げたワンピースとペチコートの下の脇腹や腰の辺りを弄(まさぐ)って、舌で分身をその幹の根元から舐め上げ始めて。
「やぁっ…!やっ‥何してっ」
布越しにも分かる、皮膚とは違う、それの温かさ、弾力性、そして、湿り気。
それが強弱を付けてカタチを辿るように下から上へ・右から左へ移動しながら動いて行って。
のび太の肢が寄り合わされる。
だが、元々媚薬の所為で力の入らない身体。その寄せる力は然程でも無く、逃れようと動かしたそれは、逆に、やんわりと、膝で出木杉の頭を抱え込むようなものになって。
「もっと、して欲しいの?」
「ちっ…違っ、」
「でも、ホラ」
「やっ、ああっ!!」
丹念に舐め上げて。出木杉の唾液とのび太自身から漏れ出した液とがその周囲の布地をしとどに濡らして。今は、くっきりとその形が浮き出てている。それも全て透けて。
狭い布の中ではち切れんばかりにしているその様は、酷く卑猥で、でも、堪らなく愛おしくて。
窮屈な其処から出して思うさま愛撫してあげようと、出木杉はその濡れた下着に手を掛ける。そして、
「ひぁあああっ」
露になったのび太を口に含むと、先刻の布越しの愛撫よりも一層丹念に、舌と唇とで刺激し扱き上げ、そして、時折歯を立てて。
折角の‘猫’なのにその舌は人間のそれで有ることを残念に思い、出木杉が苦笑する。
もしも、猫の其れだったら、もっと刺激的にソコを責め上げてあげるのに、と。でも、それだとキスの時に気持ち良くないかも知れないけれど。
張り詰めていたのび太の其処は簡単に絶頂を迎える。
出木杉の口中にそれを吐き出すのを躊躇わせる間も無く。
そして放った後も、何がどうしたのか解らぬ様子でただぐったりと、そして荒く息を吐きながら、しどけなくその様を出木杉の眼前に晒していて。
淫靡で官能的なその光景に出木杉の浮かべる笑みが深くなる。
力なく投げ出された手足。
ファスナーは下ろさぬままだったからワンピースは一応ちゃんと身に着けてはいるけれど、着崩れたエプロン、大きく裾を乱し捲くれ上がったスカート部分とペチコート。
柔らかな腹部から下の肌は桜色に染まりじっとり汗ばんでいて。
その細腰に絡み付くように留まっているレッグハンガーと剥き出しになった腿に沿って伸びたベルト部分。
そして、その真ん中で、口で受け止め処理したとは云え、濡れそぼっているのび太自身――――――――――。
本当に、こんな光景、現実世界では滅多に御目に掛かれないだろうな…、と自らの唇を一舐めして――――口の端を引き上げた出木杉の表情は、侭、チェシャ猫の笑み。
「のび太」
「ん…やっ」
三度(みたび)、その肢を片手で触れながら、出木杉はのび太の上に覆い被さるように屈み込み、過剰な程、身体を顫わせるその反応に薬の効果が未だ切れていないことを確認する。
そして、顔を寄せて、髪の先から額、こめかみ、目元に耳元、顎のライン、首筋、と唇を落として行きながら、もう片方の空いた手で、ワンピースの背中のファスナーをそっと外して、のび太の身体を裏返す。そうして現れた、細く華奢な肩と背中に同様に唇を落とし、それに手指での愛撫を加えて行って。
「はッ…ァッ…アッ…んんっっ…」
のび太が顔を伏せたまま、緩々と首を振る。本当は激しく打ち振るいたいのだけれども、その力も入らなくて。
背中を甘噛みされるように強く吸い上げられ、背骨や肩甲骨のラインに沿って舌を這わされ、前は開かれ緩んだ服の隙間から差し込まれた手に、今度は直接、胸の突起を摘
まれたり捻られたり・転がされたりして、そして下肢を這っていた手はのび太の中心で、それ自身と双球とを此れ以上無いと云う程、淫らに嬲っていて。
「ひっ…やっァアアッ……」
充分に甘さを含んだ喘ぎがのび太の口から放たれる。
それと同時に、出木杉の手の中ののび太が弾け、白い蜜が床に飛び散る。その後も、…あっ…あっ…と小さく呻きながら、のび太はその余韻に内股をヒクヒクと痙攣させて。
「も、イイかな、」
抵抗の素振りなんて、これっぽっちも無い。
桜色の肌を更に濃いピンクに染めて、与える快感にひたすら従順に反応して。
口を衝いて出るのは熱く甘い吐息と、時折、啜り泣きの交じる喘ぎ声。
屑折れそうな腰を支えて、白濁で濡れた指を双丘の狭間へと移動させる。
「…あ、んっ…」
ゆるりと腰が蠢くけれども、何かを僅かに感じた、と云うくらいで、それ以上の動きは無い。
それでも慎重に細心の注意を払いながら、出木杉は、その秘蕾に指を這わせ、襞をなぞり、そして、唇を寄せて行って―――――……………
「やっ…やっ…!何か、変っ…」
躰の奥で感じる妙な圧迫感。でも、其れだけでは無い。
躰の内から外へと圧しているものが縦横に、強弱を付け、そして浅く深く、蠢く度に、其れを収めている部分も蠢き、その度に得体の知れぬ感覚が走る。
決して不快なものでは無い感覚(それ)。
寧ろ、良い、と。そして、物足りない、と。
「は、ぁん…っ」
強請るような甘い声がのび太の口から漏れる。そして、圧迫している‘何か’をキュッ…と締め付け、腰が揺らめく。
それに、クスッ…と出木杉の笑う声が其処に極めて近い場所から聞こえて、次いで、中で動いているものとは別の何かにその入り口をなぞられて。再度、のび太の中が蠢き、腰が大きく揺れる。
「ねェ…、欲しい…?」
「ほ…欲しっ…て、何っ…が……?」
のび太の下肢の間から顔を離して、出木杉が伸び上がり、のび太の耳許に吐息を吹き込むようにして声を落とし込んで、そう訊ねる。
その間も、のび太の中を解き解し掻き回す指の動きは止めずに、そして、もう片方の手を前へと廻して。
「ひぁ…っ」
「此・れ―――今ね、君のココに入っているのは僕の‘指’。先刻迄は舌も入っていたけど、3本、銜え込んで、初めこそそれなりに少しは抵抗が有ったけれど、クスリの所為も有って綻ぶのは早くて、今ではこんなに熱くトロトロになって、絡み付いてきて…………内壁(なか)も腰(そと)もこんなに蠢いているのは催促している証拠だと思うんだけど……?」
「ひっ…あぁ…あ…あ…っ」
出木杉の手がのび太自身を包み込み、強弱を付けて扱き上げる。そして、秘蕾の中を蠢く指もバラバラに・そして連動して動かして。
のび太は背を突っ張る様にして撓らせると、全身を小刻みに震わせ、腰を大きくうねらせて。
頻りに、頭が振られる。
床に着いた両腕に擦り付ける様にして。
出木杉の手を濡らすのび太の蜜の量が増える。それに合わせて、のび太の下腹から聞こえる水音が大きく激しくなってくる。
「どう…?」
再度、耳許で出木杉が問う。
頭を振るのび太のその動きを止めるように、耳朶を食み、舌で舐め上げ、差し入れて。
ダイレクトに響く水音。
鼓膜を震わせるそれと、躰の中心―前と後ろ―で奏でられるそれとが合わさって。
元々、のび太の判断力なんて、疾うに消え失せていたのだけれど。
欲しい?と問われた時も、単に問われたことをそのまま返したつもりで有って、内容まで把握して返したつもりは全然無くて。
コクコク、と首が縦に振られる。
もう何がどうでも何でも構わないから、兎に角、楽になりたい―――その一心で。何をどうされたらそれが叶うのか分からぬままに、
「あ…っ、ねが…い、お願っ…もっ…」
そう、口にして。
「っ、あっ…ああああァァ…ッ!」
一瞬前迄、のび太の内側を圧していたモノ、それよりも遥かに大きくて熱いモノが一気に挿し入れられ、中を満たして、のび太の口から悲鳴のような声が上がる。
だが、出木杉の指と舌と媚薬の影響で充分解れていた其処は、その衝撃の中にも確実に快感を捉えて、そう間を置かずにその大きさに馴染んでいって。
「あっ…は、あっ…あっあっ…んっ」
柔襞を擦るように抉られ、奥まで衝かれ、そして秘口の直ぐ側まで引き抜かれて。
縦横無尽に様々な角度で中を行き交い、穿つ、熱と質量の有る其れに、のび太の躰が甘く溶け出す。
中も、外も、濡れに濡れて。眦に浮かび、頬を伝う涙と、口の端から顎へと流れる唾液と、蜜を吐き出し続ける自身と、其れが流れ、また愛液と合わさった秘蕾も。
悦過ぎて苦しいのは変わらないけれど、満たされた思いにいっぱいになる。
もっと、もっと、と知らずに精神(こころ)が求めて、上がる嬌声も際限無く甘いものとなる。
「のび太」
呼ばれる名前。
顎に絡む手。
躰を揺す振られながら、振り向かされる。
そして、下りてきた唇――――――――――。
酷く優しく、深く差し込まれ絡められた舌も柔らかくて気持ち良くて――――――――――――――――――――――――――――――――
「―――――って、うわああああっ;;;;;
出木杉なんかのキスが気持ち良くてどうするよっ!!僕っっ!!!―――――って…て、あ…あれ?????????」
唐突に、自分突っ込みを入れて、その声でハッと気が付いたのび太が居たのは、元の自宅の自分の部屋。
慌てて服装を見回し、次いで、もう一度、よく、部屋の中を見渡して。
漫画を読んで寛いでいた時と同じ服装に、読了して投げ出していた雑誌。机の上の時計が指しているのは、記憶に残っている時から小一時間程経った時間。
「ゆ…夢かぁ…………」
心底、ほっとし胸を撫で下ろす。
けれども、その夢の記憶はとんでもなくクリアで、そして感触はリアルで。夢の内容を思い返して早くなった鼓動を、胸に当てていた掌が感じたのを自覚すると同時に身体がカァッ…と熱くなる。
(なっ…何だってこんな夢っ…!!////////)
のび太は、恥ずかしさの余り、顔は疎か耳まで真っ赤にして、その耳も一緒に押える様にして頭を抱える。
やらしいだけの夢なら兎も角。
コスプレ(それも女装)に、相手は男。
それも、あの出木杉で、しかも最後迄ヤられちゃったりしているなんて。
自分で自分が信じられない。
夢は無意識の願望の表れだと聞いたことがあるけれど、
「こんなこと絶対願ってなんか無いっっ!!断じて無いからっっっ!!!!!/////////」
誰にとはなく、否定の言葉を叫ばずにはいられない。
「出木杉は兎も角っ、僕はマトモなんだからっ!!ちゃんとオンナノコが好きなんだからっ!!結婚相手なら今でも静香ちゃんだと思ってるんだからっっっ!!!!!!」
―――――――――………その割には静香の役どころはお世辞にも良い役とは云い難くて、のび太は首を傾げる。
そもそも、『不思議の国のアリス』なんて物語、のび太は読んだことが無い。
有名な児童文学でディ○ニーの映画にもなったものだから、そのタイトルだけは知っているし、もしかしたらチラッとその本の表紙なり映像なりを観たことが有るかも知れないとは思うけれども。
でも、女の子が読む(観る)ものだろうと思ってそれを手にした事は無い。
それなのに何で、
(その内容(ストーリー)を知っているんだろう………?出木杉の口から聞かされると云う形にしても――………)
夢なのに。
夢の筈…なのに。
「ははっ…まさか、ね」
一瞬、怖ろしい想像が頭に浮かんで、のび太は慌てて首を振る。
アレは夢では無く現実―――実際の、今、のび太が居るこの世界の現実ではなくても、パラレルワールドの何処かに迷い込んでの現実ってことも有り得るんでは――――と。
けれども、今日はドラえもんは朝から居ないし。
何か用事が有るとかで22世紀に行っているし。その手段は当然、机の引き出しの中のタイムマシンで、帰って来るのも勿論、其処からであって、未だ、ただいま。と顔を合わせていない現在、家の外から大声を出しながら戻って来るなんてことは有り得ないんだし。
のび太独りで異次元に迷い込むなんて、そんなの無理。だから。
「もしかしたら、もうずーっとずーっと小さい頃に読んだか観たかして忘れてるだけかも。僕って物覚えは悪いけれど物忘れは立派だし!うん、きっとそう。間違い無い!」
強引にそう結論付けて。
そして、もう一度、ホッと息を吐いて、そうと決まればそんな悪い夢のことなんて一刻も早く忘れよう、と気分転換にアイスでも食べながらTVでも観ようと階下に下り掛けて――――――、と。
「―――……大変だ大変だ大変だッッ」
不意に聞こえて来たのはドラえもんの声。
(嘘!?まさかっ!!??)
のび太がギョッとして振り返る。そして、唐突に・急激に襲い来るイヤな予感に、
(だっ…大丈夫だ大丈夫っ;;;ドラえもんは僕が転寝してる間に帰って来てたんだっ、きっとっっ!!それで今度は外に出掛けててっ!!だって声がするのは窓の方からでドアの方からじゃないしっ!!!タケコプターもウサ耳が有ったら着けれないだろうしっ!!!!!)
必死で夢と現実の違いとその予想とを自分自身に説明し、云い聞かせる。
だが、そう考えている間にも、どんどんと弥増す嫌な予感に、窓に近寄ってドラえもんの姿を確認するなんて行動は取れなくて、それどころか、足はじわりじわり…と後方へと後退って行って。
而して。
「大変だ大変だ大変だッッ!!」
「ひっ…!」
窓から飛び込んで来たドラえもん、その頭には中央にタケコプターも着いてはいたが、その両脇にはシッカリ長いウサギの耳も着いていて。首には鈴と同じ大きさの時計。
そして驚愕と衝撃の声を上げるのび太に別段構うところの無い様子なのは先程と同じだったのだが。
「なっ…嘘っ!?ちょっと冗談ッッ!?何でー―――――――――――――――っっっ??!!;;;;;」
窓から入ってきたウサ耳のドラえもん。
彼は先のドアから現れたドラえもんとは違い、引き出しの中に消える寸前、手にしていた傘の持ち手をのび太の服の襟首にヒョイ、と引っ掛けると、一緒に中へと引き摺り込んで。
真っ逆様に暗闇の中を落ちるのび太の脳裡を過ぎるのは、当然、先刻の‘あの’光景。
「ヤだヤだヤだッッ!!//////誰か助けてッ!!本当の本物のドラえもー―――――――――――んッッッ!!!!;;;」
果たして、この後の展開や如何に…………?
maybe, never end.(笑)