「……………………また太った」




『デキゴコロ』





 体重計にもう一回乗っても、変わらなく増えている数字に肩をおとした。
 同時に背中に冷や汗が流れる。

(どうしよう…バレたらヤバイ)

 のび太は非常に焦っていた。




 出木杉に結婚を前提にと同棲を推し通され、うかうかしているうちに大学から2人生活となってしまっていた。
 最初こそ反論はしたが、今ではいてもらわなくては困る存在。

 何せ、出木杉は家事が完璧だ。
 料理は勿論掃除に洗濯、家計の出費まで欠く所無し。
 やる事は早いし、料理の味なんて有名シェフに一歩も劣らない。栄養も偏り無し。
 何をやっても並以下か失敗するどんくさいのび太には最適な男、出木杉 英才 21歳。
 今のび太が健康で不自由なく過ごせているのは、彼のおかげとしか言いようが無い。


 放って置いたら超不健康な食生活しかしないのび太に、出木杉は自分の作った物しか食べさせなかった。
 コンビニの弁当なんてどんな薬品が入っているかわからないし、ファーストフードでは栄養が偏る。
 愛しい愛しい恋人に、そんなものを食べさせるなど持っての他。
 故に、過保護な出木杉はのび太に特に1人で外食など絶対に許すことはなかった。





「あ〜…やめとけば良かった…」

 しかしその不健康が割と好きなのび太。
 勿論、出木杉の作る料理は好きだ。なんといっても美味しい。
 頼めばなんだって作ってくれるし、どこのものより最高だとも思う。


 だがしかし。
 コンビニ弁当も、ファーストフードのハンバーガーも、のび太は大好きなのだ。
 スナック菓子にチョコレート菓子も捨てがたい。
 けれど食べたら怖い同棲相手がいるので、できるだけ近寄らないようにしていたのだ。


 なのに、つい。
 友人に付き合っていったら後数センチで手が届くところにあって。
 甘い誘惑に打ち勝とうとかなり頑張っていたのだが、友人の
「買えば?」
 の一言に、気づけばレジで金を払った後だった。

 そこで済めばよかったのだが、人間欲望には勝てぬもの。
 それから5日間。誘惑に負けつづけている。





「昨日が1キロで…今日が2キロ…」

 合計3キロ。
 自分は意外と太りやすい体質らしい。
 絶対出木杉に気づかれる。
 食べたことがばれたら………
 考えるだけでも恐ろしい。






「ど、どうしよう…」
「何がどうしようなの?」

 ひいっ!!
 自分以外するはずのない声に驚いて振り返ると、今決して会いたくない人物がそこに居た。
 ちょうど大学から帰ってきたところらしく、のび太の顔を見れて幸せそうだ。





(いけるかも…)
 まだ体重計の存在に気づかず僕にしか眼がいっていない今のこいつならっ。






 のび太は出木杉に笑いかけながら、そろりそろりと体重計から降りた。
 そして自分の後ろに隠れさせるように立つ。
 顔に笑顔は絶やさない。

「お帰り。早かったな」
「今日は講義が昼までだったからね。急いで帰ってきたんだ」
「あ〜そういえばお腹すいたかも…」
「じゃあ今すぐ作るよ。で、どうかしたのかい?」

 きっと本人は純粋に聞いているのだろうけど、僕にしたら心臓に悪い。
 焦る気持ちをおくびにも出さず、笑顔でなんでもないよと答える。
 今日は笑顔を大サービスするから、このままさっさと台所にでも行って欲しい。



 そしてのび太の願い通り出木杉は特に問い詰めることも無く、そっかとひきさがった。











 ふりをしてくださった。












 出木杉の笑みが増した。

「のび太?僕に隠し事はしないって決まりだったよね?」
「え、も、勿論」
「うんうん。そうだよねぇ」

 増したはずなのに、何故こんなにも寒気がするのだろう。
 怖い。逃げろ。
 数℃下がった室温が、更にのび太を震え上がらせた。
 ヤバイ。
 これは絶対








「外で売ってるもの食べたね?」








 ばれた――――――!!!!!

 どこまでも増す笑みに比例するように、のび太の身体がガタガタ震える。
 寒くも無いのに歯がガチガチ合わさる。
 一歩ずつ迫るに合わせて下がれば、狭い洗面所の隅までじりじりと追い詰められてしまった。


「食べたね?」
「ど、どうしてわかるんだよ」
「レシート」

 玄関先においてあったよ?
 そう言って、唖然としているのび太の顔の前でちらつかせる。

「気をつけなきゃいけないよ?ストーカーとかはこういうのも狙っていたりするんだから。のび太は可愛いから特にね」

 まあ僕が守るから心配ないけど。
 そうわざとらしく別の話をする恋人に、のび太はもう逃げられないことを悟った。
 それを確証づけるように、出木杉は言った。










「じゃあ早速ベッドに行こうか」













 その後のび太は、出木杉の作るものしかうけつけられなくなったという。








fin.
サツマイモコ様(メントム・メロメロ


†††††  作者様よりコメント  †††††
初デキノビなので、ちょっと緊張気味です。
ラヴいのということで…き、きっとラヴいのではないかと思うのですか(汗
私のイメージするデキノビはこんな感じです。
出木杉は万能男ということで(笑
どうぞお納め下さいませ。



52625キリ番踏み人、サツマイモコさまからの頂きものです♥
私の「ラヴいのを!」というリクエストに見事200%増しで応えてくださりました!
ラ…ラヴい…♥
のび太くんたら相変わらず詰めが甘いというか学習しないというか☆
なんかも〜ホント恐妻家みたい…♥
出木杉…真綿首締め系攻め…似合うね、黒いよ…(笑)。
のび太くんの顔を見れただけで幸せになっちゃうくらい甘いのと紙一重に、
むしろ出木杉がストーカーくらいの執着を感じます(笑)。
んもぅ、最後の展開…!きっとあんなことやこんなことで色々色々…
今こそ行間を読め(笑)!
サツマイモコさま、素敵にラヴい出木のびをありがとうございました!(#^3^#)



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