執着

執着


「私は貴方が次期社長に相応しいと思っております」

微かな空調音がする以外何の音も無い広い部屋に、低く魅惑的な声が静かに響く。

「周りはそう思ってないし今時世襲制は意味無いだろ・・・お前が僕に付く理由が分からない」

自分をひたと見つめる隙の無い美貌の男を一瞥し、のび太は重厚な造りの机に凭れ掛かった。

(またこの話か・・・。毎度御苦労な事だ・・・。)

はっきり言って自分が社長に向いてるなんて思わない。
頭の回転は悪くないが、他人を納得させられる裏付けが何も無いのだ。
仕事は今の所一般の社員と同じ事をしており、それなりの成果を挙げてはいるが、
それに対して例え妥当な評価をされても、自分の背景に皆の目は向く。
それを上回る成果を出せという事なのだろうが、社長を継ぐと思っていないのび太はそこまでする気力が無い。
そもそも自分はこの会社にいるのが間違いなのだ。

だが、のび太が他の会社に入る事を強固に反対した人間のうちの1人である目の前の男は、
のび太の表情から彼の考えを読み取ったが、敢えて何も言わない。

「僕は楽はしたいけど、誰かの操り人形になるのはゴメンだ」
「そんなに私が信用できないですか」
「どうやって信じろっていうんだ」
「どうすれば信じて下さるのですか」

これまたいつもと同じやり取りだ。
もういい加減うんざりしていたのび太は、いつもと違うボールを投げてみようと思い立った。
プライドの高いこの男が、一瞬でも動揺するなら見物だ。

「跪いて靴に口付けするとか・・・ははっなんてな」

言いながらも、余りに余りな事に自分で笑ってしまった。
だがーーー

「それで信じて下さるのですか」

ピクリともせず、真顔で返してくる。

「おいおい・・・冗談に決まってるだろう」

ジョークが分からない男では無いはずだが、気付けばいつのまにか出木杉はすぐ目の前に来ていた。
驚いたように見上げてくるのび太を見ながら出木杉は両膝を付き、躊躇わず顔を下げた。

「馬鹿、そんな事するな!」

出木杉が自分の靴に口付けようとした寸前、のび太は両肩を掴み無理矢理引き起こした。

(本当にやろうとするなんて・・・何考えてるんだコイツは・・・)

未知の生物を見る心地で出木杉を見る。
そういえば、まともに出木杉を見るのは初めてかもしれない。
今迄も何人か教育係がいたが、あわよくば自分を利用しようとする彼等とは違うのだろうか。
膝立ちのままのび太の腰を抱えるようにして見上げてくる出木杉の瞳は、何処か焦燥感が見て取れる。

のび太の信頼を心底乞うような。


まるで、求愛されているようなーーー。


しゅる、という衣擦れの音にはっとして見ると、出木杉が自分のYシャツをズボンから引き出していた。
しかもボタンはいくつか外されている。

「・・・何してる」

思わず動揺してしまった。

「私は貴方じゃないと意味が無いんです・・・」
「出木杉・・・何・・・」

しなやかな蔦がその強い生命力を示すように、出木杉の腕が、全身が、のび太の身体に絡み付く。

ネクタイを避けるとのび太の腹の部分が露になり、日に焼けていないミルク色の肌が覗く。
釘付けになったように、出木杉の視線が注がれる。

出木杉の顔が吸い寄せられるように、たまらないとでもいうように近付いても、
思いも寄らない行動に虚を突かれたのび太は、動けないままでいた。

臍の横に口付けをされた。

「っ・・・」

想像と違い、唇が熱い。
軽く押し付けられるように繰り返される口付けは、両手のまさぐるような動きと相まって段々と深くなり、
まるでーーー。

「もう止せ・・・」
「・・・」
「出木杉・・・分かったから」

止める気配の無い出木杉に、のび太は軽い畏怖を覚える。

「出木杉っ・・・」

一瞬、得体の知れない何かが身体を走り抜け、思わず髪を引っ張ってしまった。
艶やかで美しい黒髪が自分の白い指の間に絡むその様は、なんだかとてつもなくエロティックだ。

「出木杉!」

思わず大きな声が出た。
やっと顔を離し、自分を見上げてくる出木杉と視線が絡む。
その瞳の中には、様々な感情が渦巻いていた。

「出木杉・・・」
「私は、貴方しかいらないんです・・・」

目の前の男の狂気じみた執着心が足下からヒタヒタと、のび太の全身を冷やしてゆくーーー。



おいおいショタの次はリーマンかよ(笑)!
趣味大・全・開♥でございます〜♥(#^3^#)
しかも珍しくシリアスちっく☆
いつまでもGallery内できのび絵の最新がショタ絵じゃ誤解を生むかもしれんと早速描いてみたものの、
コレってここに置いておいていいのか?
ちょっと際どくね〜?
あーでも主従関係楽しかった☆
何実におそろいのカフスは、出木杉がプレゼントしたものだったり(笑)!
ほんと、くっだらない設定とか考えるの大好きだ♥


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