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扉の閉まる音がして足音が遠ざかると、室内に静寂が戻る。
出木杉が振り返った気配があるが、のび太は顔を上げられなかった

床に着いた自分の手を見つめる。

腕が震えていた。

それは決して、今迄見た事の無い別人のような出木杉を目にしたからでは無い。

半ば以上無理矢理だったとはいえ、再び遊びを始めたと思われても仕方の無い事だった。
なにせ、散々やって来た事だ。強姦まがいでも、そう主張するには過去の事実が有り過ぎた。


のび太は、主人に見捨てられるかもしれない恐怖に怯えていた。

「のび太」

先程の声が嘘のような優しい声で名を呼ばれ、頭を撫でられた。
のび太の身体がびくりと震える。
出木杉はその場に膝を着くと、震えている大事な子犬を優しく抱き締めた。

「よしよし怖かったね、もう大丈夫だよ」

そう言って、落ちつかせるように頭から背中にかけて、ゆっくりと撫でてくれる。
変わらぬ優しい仕種に、出木杉の腕の中、のび太はようやく顔を上げた。
いつもと同じように、慈しむような瞳で見下ろして来る主人の瞳を見つめ返しながら、のび太は懸命に言葉を綴った。

「ごめ…なさ…っ…す…捨てない…で…」

不安げに瞳を曇らせ、自分に縋り付いて震える声で一生懸命訴えて来る子犬のなんて愛らしい事だろう。
出木杉は口元が緩むのを止められない。

「捨てるわけないだろう」

間髪入れず答えてやる。
それでもまだ不安そうな子犬の額に、そっと唇を寄せた。

途端、びっくりしたように目を見開いて、のび太のやや青褪めていた白い頬がみるみる桜色に染まる。
抱き締めたり撫でたりする以外のスキンシップは初めての事だ。

ようやく落ち着いたようなので、出木杉は散乱していたのび太の衣服を集めると順々に着せてやる。

「ああ」

子犬の可愛いお尻が、ローションで濡れている。

「綺麗にしようね」

出木杉はポケットからハンカチを取り出すと、まるで子供のトイレの世話をするように優しく拭い取った。
のび太は頬を染め、恥ずかしさを堪えるように出木杉の肩口に顔を埋めたままされるがままになっていた。

全部の服を着せ終わると、出木杉は部屋の一番奥までのび太の手を引いて連れて行った。
窓際に置いて有る椅子を一つ引くと、そこに腰掛ける。

「のび太、さっきの事は大体想像が付く。君の判断は仕方無かったと思うが、一つ反省しなくちゃいけない」

主人の言葉を大人しく待つ子犬に、諭すように続ける。

「隙を見せたんだね」

その通りだ。
押さえ付けられながら、心の中で馬鹿な男共を罵ったが、それ以上に油断していた自分を責めた。

「悪い事をしたら、お仕置きをするよ」

お仕置き。
そうだ、悪い事をしたら、主人に叱ってもらわなければならないのは当然だ。

「ズボンを下ろしなさい」

のび太は先程出木杉が穿かせてくれたばかりのズボンを、出木杉の命令で下着ごと膝まで下ろした。

「ここへ…お尻を叩いてあげる」

のび太は椅子に座った主人の膝の上に腹這いになる。
出木杉は白く形の良いのび太のお尻をサラリと一撫ですると、膝の上で大人しくしている可愛い子犬に声を掛けた。

「始めるよ」



パン、パン、と乾いた音が室内に響く。
叩かれる度に程良く肉の付いたのび太のお尻が瑞々しくプルリと震える。
反省しなければならないのに、叱ってもらっているというだけで嬉しかった。
しかも、親が我が子を叱る時のような、愛情の元行われるスパンキング。

そんな心地良さを感じつつも、直接肌を触れる感触に、考えないようにしていた欲望がぞろりと頭を擡げる。
出木杉のあの大きな手が自分の尻を叩いているのだと思うだけでのび太は興奮を抑えられなかった。
頬と同じように、足の間にも熱が集まるのを感じる。

30回程叩いた所で音が止んだ。

「すっかり赤くなってしまったね」

出木杉が、肌が白いせいですぐに赤くなってしまうのび太の尻を宥めるように撫でる。
そんな仕種にも感じてしまう。

「さ、おいで」

出木杉は一度立たせたのび太を、自分の膝を跨いで向き合うように座らせた。
叩かれている最中に足首でたぐまっていたズボンは抜けて、のび太は上半身はきちんと服を着たまま、下半身に靴下と靴だけという格好だ。

膝に乗せてもらった子犬は頬を染めたまま、もじもじと落ちつかない。しきりにシャツの裾を引っ張っている。

「…のび太、見せて御覧」

出木杉がのび太の手をやんわりと外させると、シャツの裾から半ば以上勃ち上がったのび太自身がぴょこりと顔を出した。

「お尻叩かれて感じちゃったの?」

お仕置きにならないね、と笑いながら、出木杉はおもむろに顎の下にするようにのび太の分身を指でくすぐった。

「…ぁ」

思わぬ刺激に、恥ずかしさと興奮をぎりぎりで堪えていたのび太の口からあえかな吐息が零れ落ちた。
慌てて口を噤む。

優しい主人がせっかく叱ってくれたのに、こんな風になってしまうなんてなんて浅ましいんだろう。
呆れられているのかもしれない。恥ずかしくて堪らなかった。

その様子を、のび太の主人はあの毒のような色気を醸し出す瞳でじっと見つめてくる。
何か考え込んでいる様子だ。
今の自分には刺激の強過ぎる眼差しに居た堪れずに視線を反らすが、そうしたところで余り効果は無くじわりと身体の熱が上がるのを感じた。


しばらく後、ようやく出木杉は口を開いた。

「のび太は、気持ちの良い事が好きだよね」
「…うん」

あの以前の遊びの事を言っているのだろうか。

「ああ、前の事を責めているのでは無いよ」

即座にのび太の不安を否定する。一旦言葉を区切ると、続けた。

「僕は君に自由にして良いと言った。君が望むなら、遊び相手の雄犬も用意しようと思っていた」

子犬の生活環境を快適に整えるのは飼い主の役目だからねーーー。

そう言うと、出木杉は再びのび太自身へとその長い指を搦める。

「あっ…」
「けれど君には唯一躾なくてはいけないところがある。今日の事といい、快楽に弱過ぎるところだ」

ゆるゆると扱かれる。初めて主人に触れてもらう喜びにのび太は腰が砕けそうになった。
とっさに出木杉の首に腕を伸ばして半ば崩れながらも何とか持ちこたえる。

「今日は…っだって…無理矢理っ…」
「そう、無理矢理だったね。でも君のここは気持ち良さそうだったよ」

早くも先走りが出始めたのび太を扱く手はそのまま、もう片方の手が後ろに回されするりと入口を撫でられた。

「ゃんっ」
「君の意思を無視して犯そうとする男の指を3本も美味しそうに銜え込んでいたね…」

のび太は反射的にビクリと腰を浮かせいたずらな指から逃れようと前へ前へと腰をずらしたが、そのまま追いかけて来る指の腹で撫でられ続ける。
限界まで逃げて出木杉に縋り付くような格好でずるずると落ちると、自分の蕾が丁度出木杉の股間に当たった。
普段はひたすら自分を甘やかす優しい主人が初めて雄の面を覗かせ、僅かに存在を主張し始めている。
あ、と思う間もなくぐいっと下から突き上げられた。

「あんっ」

さらに間髪入れず先端をぬるりと撫でられ、のび太は熱を持ち始めた蕾を出木杉の雄芯に自ら押し付けるように腰を揺らしてしまう。
出木杉もそのままゆるりと腰を回す。

布越しの疑似セックス。

そのもどかしさに、何より出木杉が僅かでも興奮している事に、のび太は浅ましいお願いが今にも口を吐いて出そうになるのを必至に堪えた。

「そうだよのび太、君が感じていいのは僕の与えるものだけだ…」

主人の甘い束縛の言葉に、のび太の全身にゾクリと戦慄が走り抜ける。
その身体の奥から沸き上がる熱に押されて、堪える間もなくのび太は出木杉の手の中にトクリと蜜を吐き出した。

「ぁっ…ごめ…ごめんなさい…」

こんなに早くイッてしまうなんて恥ずかしかった。しかも、主人の綺麗な手を汚してしまった。
のび太はずるずると床に降り出木杉の足の間で膝立ちになると、自分の吐き出したものを零さないようにしている主人の手に舌を這わせた。
ねろりと、自分の出したものを舐め取る。

「良い子だね」

指を一本一本、口に含んで丁寧にしゃぶる様子は、とても可愛らしかった。そしてとても淫らだ。
出木杉は含まれた指先で、のび太のベルベッドのような舌の表面をなぞる。直ぐに舌が絡んでその感触を楽しんだ。
綺麗にし終えてもいつまでも名残惜し気に舌を這わせながら、のび太の興奮で潤んだ瞳が出木杉を見上げた。
子犬の願いを読み取り、微笑んで主人は了承する。



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